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四条烏丸のあの子

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会社の飲み会。コロナ禍もあり久しぶりに集まって、飲んで食べて話して、ズンバというスイッチのゲームで遊んでたら22時を過ぎていたのでサクッと帰ることに。くたくたで、タクシーで帰ろうかとスマホを開くと、夫から「トイペ買ってきて」とメールが来ていた。

どうせコンビニに寄るならバスで帰るか、と思い直し、歩き始める。

烏丸通を曲がり、四条通を歩き始めたところで声をかけられる。小柄な外国人の女の人。わたしの方に向けた手の中には拙い日本語でメッセージが書いてある。わたしは学生で、生活が苦しく、お菓子を買ってくれないか、お菓子は美味しい、という内容だった。反射的に「いいよ!」と言ったけど、子どもの習い事の支払いも重なり手持ちの現金が全然ない。「ごめん、今お金ないからおろしてくる」というとその子はすごく不安そうな顔をしていた。

交差点を越え、斜め前に見えるコンビニに向かい小走りする。お金を下ろして、トイレットペーパーと日持ちがしてカロリーが高そうなバナナのパウンドケーキを買う。急いでいるのに、ポイントカードありますか?と聞かれて、楽天ポイントあります、といってしまう。この状況で楽天ポイントを貯めようとする自分の姑息さに呆れる。

支払いを終え、これまた小走りでコンビニを出る。信号待ちでちいさくあの子が見える。短い信号を待つ間に3人に声をかけ、断られていた。信号が変わると同時に走る。あの子のところへ駆け寄る。肩を叩き千円とパウンドケーキを差し出すと、あの子は目を丸くする。「あなたっていい人ね」という。当たり前だ、わたしはいい人と思われたいような行動をしている。たぶん、自分に酔っている。そう思って何も言えなくなる。

ありがとう、優しい人、と言ってお菓子を渡してくるあの子に、かろうじて「勉強頑張ってね」という。手を差し出してみる。

握手をしながらあの子は「ありがとう、あなたのしあわせをいのります、あなたのかぞくのも」といった。

 

そのとき、たまたま楽しい会のあとで、タクシーに乗らなくって、あの子は一見するとわたしと同じジェンダーで、わたしより明らかに幼く、小さく、かよわくて、求められている金銭も気軽にはらえるもので、きっと何か一つでも条件が違ったらこんなふうにはならなかっただろう。あるいは気づかず、通り過ぎていただろう。そう思いながら、握手したあの確かさだけが残る。

 

もし四条烏丸で、あの子を見かけたらお菓子を買ってください。悪い子じゃないです。