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とりあえずで異性愛すな!『ハケンアニメ!』

11月からジムに通っている。特にトレーナーなどがいない、簡素なジムで、素人的に色々模索して、ウォーキング→二の腕→尻→肩→外腿→内腿→腹筋というルーティーンができている。

それをこなす間、ライムスター宇多丸の「アフター6ジャンクション」通称アトロクをSpotifyで聴いている。大体は週刊映画時評「ムービーウォッチメン」を遡って聴く。この企画は、配信の時期に注目の映画を番組がいくつかチョイス、さらにリスナー枠1枠を入れてガチャで当たったものを宇多丸が見て批評する、というもので、最近配信などでみる映画はこのムービーウォッチメンで聴いたもの、の割合が増えてきた。

仕事後のむすめのお迎え→洗濯→食事→ジム→風呂のルーティーンがうまく回って、夫婦でちょっと手持ち無沙汰になった木曜夜。永遠に終わらないNetflixザッピングに悶々とする前に、その日に聴いたムービーウォッチメンのリスナー枠として紹介されながらもガチャに当たらなかった『ハケンアニメ!』が目に入った。リスナー枠は、紹介される時にリスナーからの推しコメントがあり、そそられる、ってこともあって即決。

見始めたらうんうん、なんかいいぞ。

ハケンアニメ!』は、貧困家庭出身で自力でいい大学を出て公務員になったリアリストな主人公、斎藤瞳が、くたくたの体で見たアニメに救われて情熱を燃やしアニメ業界に転身。新人監督として、自分を救ったアニメを作った憧れの監督、王子千晴と同じ時間枠で覇権を取るアニメ「ハケンアニメ」を競い合う、というストーリー。

当然だけど以後ネタバレ注意。

毎週30分、これまで消費的な態度の視聴者として見てきたアニメがいかに多くの人に支えられて作られているのか、という職業ドラマの部分や吉岡里帆演じる斎藤がマイルドな『ぼくらの』的なロボットアニメを作り、中村倫也演じる王子が『まどマギ』と『AKIRA』の掛け合わせみたいな魔法少女アニメを作る、という構図、作中作が結構面白そうに作られていることなど、前半はかなーり楽しく見ていた。

しかし、問題は後半である。

今作、斎藤には柄本佑演じる行城というプロデューサーが、王子には尾野真千子演じる有科というプロデューサーがつき、共にアニメ制作における難局を乗り越える、というバディモノの側面があったのだが、終盤の終盤に急に双方ともロマンティック・ラヴの感じを急に出してきてマジで血の気が引く思い。さらに神作画として双方のアニメ制作を支えた小野花梨演じる並澤というキャラクターも同じく一緒に仕事をしていたメンバーとロマラヴをはじめ(並澤に関してはキャラ造形としてもその展開を要することに矛盾はないし、結構最初からフラグが立っていたのでまぁまぁという気持ちだったが)、怒涛の三連異性愛の感じを見せられ、はっきり言って蛇足であると感じた。恋愛関係なんてなくとも、それぞれが仕事で築きあげた関係の特別さは全然伝わるし、ここまで見てきた男女の対等な関係が結局異性愛としてしか回収されないのはあまりにも安直である。テーマとしてアニメ制作への情熱を謳っているわりに、結果的にもしかして、アレもコレも仕事への情熱てか、「好き💖」だったからうまくいったん?みたいな気持ちになってしまう。一応付け加えると、恋愛をするのが悪いということではなく、男女が一緒にいい仕事をする、の先に恋愛しか関係の選択肢がない状態って悲しすぎませんか!

まあ、原作ものだしな、という思いもありつつ、作中で斎藤がアニメのラストシーンをギリギリのタイミングで大きく王道からはずす、という判断をした際に、行城が「目先の覇権ではなく、十年先も語られる作品を」と語っていたことが引っかかる。

個人的には、かなり面白く見たからこそ、悔しいのかもしれない。作中、保守的な既存のラストを捨て、未来に向かって開かれた作品にしようという動きがあったにも関わらず、男女のバディにおいて、とりあえず恋愛関係を匂わせるという超超保守的な展開で終えたことにより、今作は十年先に語られる作品、でなくなってしまったような気がするのである。

なお、一緒に見ていた夫は、今作の後半のサントラが、彼にとっての人生ベスト級映画『ソーシャル・ネットワーク』とほぼほぼ同じだったことに憤慨しており、聞き比べると確かにそっくり!デヴィッド・フィンチャーも激おこしておかしくないレベル!であった。特にリミックスされているということもなかったのでハナから今作は10年後の未来やら世界展開など、今より広い時空間を追い求めていなかったのかもしれない。

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