朝起きたらすぐに子どもが部屋からベッドに飛び込んできた。
「じつは昨日たいりょうにはなぢでちゃったんだよね」というので、なんで起こしてくれないの?と聞くと、「だってママたち安らかにねてたから」とのこと。わたしたち、死んだ?
習い事の送りを夫に任せ、シャワーを浴びる。風呂から出ると夫は帰ってきていて、入れ替わりにシャワーに向かう。髪を乾かしてると風呂から全裸の夫が出てきて「ちん!」と叫んでいるので「おかみ!」と答えると夫は不思議そうな顔をする。そこで『光る君』で一条天皇が自分のことを朕と呼んでいることを説明する。そしたら夫が急に「チンのチンチンがチンチンじゃ〜」と言いはじめたので爆笑してしまう。慌てて化粧をしてチャリでお迎えに行く。風を切りながら「チンのチンチンがチンチン」が頭を離れない。
子どもと無事合流して、多聞に向かう。自転車を停めて、歩きながらゲームセンターの中を通ると、子どもが突然「 クレーンゲームってたぶんハンザイだよね」といいはじめた。なんで?と聞くと「だって、おかねはらってもだいたいなんにも手にはいらないやん」とのこと。「そんなことないよ。ゲームをするという体験を買ってるんだよ」と答えた。我ながらオトナでイヤな答え。
お昼にはツナチーズのホットサンドを食べた。
多聞にはキリンの大きな置物がある。多聞でバイトがしたい子どもは、キリンより背が高くなったらバイトしていいよ、と店主に言われているため、毎度のように背比べをしている。
多聞を出て交差点で信号待ちをしていると、子どもに突然「おとーさんとおかーさんがであってなかったら、ぼくっていない?」と聞かれる。そうだねー、というと「もし二人がであってなかったら、と思うとあたまの中がぐちゃぐちゃしちゃう。 ぼく、なんで生きてんだ?って」などというのでなんか親子だなー、と思った。
そのまま子どもが友だちと約束した公園に向かう。時間も場所も口約束。本当に来るかは、わからない。
子どもが聞く。
「もしきたら?」
「うれしい」
「こなかったら?」
「そーゆーこともある」
人生においては意外とそーゆーこと、が多かったりするんだよなぁ、と心で呟く。
約束の時間より早めに着いたので子どもはすぐにブランコに向かう。あいているベンチに座ってしばらくするとなんだか子どもの周りがざわざわしている。あれ?と思ったら鼻を押さえた子どもがこちらに向かってくるので、また鼻血かしら、と駆け寄ると、泣いていた。
「どうしたの?」と聞くと「おこらないでね」という。
どうやら子どもがブランコに乗ってたときに、2-3歳の子が柵を越えて子どもの乗るブランコの後ろに走ってきて、そのままブランコに乗る子どもの背中がぶつかり倒れてしまったとのこと。事故とはいえ小さい子を傷つけたショックで子どもは泣いている模様。
念の為、こけた子のお母さんのところに行ったが、外国の方で日本語が通じず、うまく伝わったかわからないが、大丈夫だよということを言っていた。こけた子自身も元気に走り回っていてほっとする。
なんとなく幸先が悪い中だったが、子どもの友だちのJちゃんは無事にやってきた。
その子がよく行く駄菓子屋さんに案内してもらうが、閉まっていて結局コンビニにいく。
子どもたちが各々お菓子を買う。Jちゃんにお金ある?と聞くと「八千円もっている!」とのこと。大きい金額に少し不安になる。
それから公園でお菓子を食べ、遊ぶ子どもたちを遠くで見守りつつ、ベンチで仕事をする。
途中で鬼ごっこに誘われちょっと一緒にやる。おばはんには向かない遊び。
あっという間に暗くなったので解散しようとするとJちゃんが財布がない!という。ポケットに入れていたがどこかに落としたらしい。
慌ててスマホのライトをつけて公園中を探し回ったが、ない。 そうこうしているうちにJちゃんの門限の時間になってしまう。Jちゃんにお母さんに連絡しよう、というと中国語しか話せず、そのためほかの人からの電話には出ないとのこと。
さらにお母さんに言っても怒られるだけだから、言いたくない、という。Jちゃんは四年生。思春期にも入りかけ、色々思うところもあるのだろう。
とはいえ、子どもにとっては大金なので、子どもだけでは対応するのは不安であり、なんだか放っておけない。来週も公園で集まって一緒に交番や近くの児童館に聞いてみよう、と約束をした。
帰り道、わたしも子どももずうん、と落ち込む。
家についてすぐに夫に事情を話し、気持ちを切り替えるために子どもと二人でお風呂に入った。
夜ごはんは鶏鍋うどん。大根と鶏肉がほろほろで美味しい。
ごはんの後、子どもとポケポケをする。その様子を見て夫が「なんか、二人がやってくれてるのうれしいなぁ」と寄ってきた。そのまま3人でソファでダラダラする。NHK+を開くとブラタモリのサムネが京都だったので見る。
見てる途中で何回かおならが出た。するとあまりの臭さに夫も子どももリビングの端に行ってしまい、ソファで一人きりになる。
しかし、離れてもついて回る臭いに夫も子どももかなりゲンナリしていた。申し訳なく、夫に「どうやったらおならくさくなくなるんやろ」、と問いかけると「性根が腐ってるから、なおらんやろ」と言われる。はい。
一時間くらいして臭いが消えると夫が「ヘクサゴーストや!」といいながら寄ってきて、わたしの頬にキスした。