それは、恋愛の起源において、わたしが心を奪われたあの瞬間において、すでにして起っていた喪に対する恐怖なのだ。誰かがわたしに言ってくれなければならない、「苦しむのはおよしなさい。あなたは彼を(彼女を)とっくの昔に失っていたのですよ」と。
10時に起きる。中年の心身に朝帰りはつらく沁みる。リビングに行くと夫はなぜだかソファで寝ている。上に乗って抱きつくと呻き声がする。子どもが「おとーさん、おもそうだよ、やめなよ」というので、「これは喜んでいるんだよ」と教える。
起きた夫曰く、朝方にお腹が痛くなったようでトイレに近いソファに移動したとのこと。とりあえず夫のお腹に手を添え温める。
子どもが友だちの家に行くので、荷物に色々詰め込み出かける準備をしていた。こういう時だけ準備が早く、家を出ようとして、まだ早すぎるよ!というのを五回くらいやった。
子どもは友だちの家でごはんを食べる約束だったので夫と2人きりでランチにいくことに。
「三十分で準備してみせまっせ!」と豪語したが、結局めかしこんでしまい一時間十五分かかった。
近所のお蕎麦屋さんに歩いていく。夫と二人で外を歩く機会はそうそう無いのでうれしい。
わたしはかしわ天そばを食べ、夫はおつまみとそばの食べ比べを食べる。若い恋の話をたくさん聞いたからか『恋愛のディスクール・断章』を読みたくなり持っていったが、夫と『ナミビアの砂漠』について話していたら読む暇がなかった。
帰り道、いつもの交差点で青信号の終わり気配を察し、夫と顔を見合わせダッシュ。渡りはじめてすぐに点滅しはじめて、計算通り。
『恋愛のディスクール・断章』をパラパラ読む。たまたま開いたページに押しつぶされて死んだ虫の姿が転写されていた。どこを読んでもまじで恋愛の全てが書いてあってすごすぎる。感動してため息をつきながら時計を見たら、子どもが帰る時間になっていたので迎えにいく。
家に帰り『ゾディアックを名乗る者』を観はじめたが、すぐに寝てしまう。眠りは深かった。うっすら目を開けると夫がわたしの顔を覗き込んでいる。わたしの頬をさするとタバコを吸いに外に出ていく。
起きて『ゾディアックを名乗る者』を巻き戻して観ながら洗濯物を畳む。平日にちょっとずつ畳んでいればこんなことにならないものを、大量の洗濯物に囲まれて混乱。しかし、なんとか畳みきる。
『ゾディアックを名乗る者』は第一容疑者と幼少期を過ごした兄弟が過去を回想する、というドキュメンタリー。
兄弟がフィンチャーの『ゾディアック』を見て犯行現場の風景が、過去自分たちが容疑者と行っていた場所の景色と合致していて、あれは下見だったんだ、となる場面にゾッとした。
映画制作の緻密さが、現実を変える瞬間。
眠すぎてソファから動けず、そのままの勢いで『アイズ・オン・ユー』を観はじめる。
ずっと漫画を読んでいた子どもが、ロン毛のダニエル・ゾヴァットが推しのジェイソン・モモアに似ている!と観にきた。するとゲームをやっていた夫もやってきて三人で観ることに。
女性たちの訴えの矮小化がかなりリアルに描かれていて、サスペンスさの具合も長さもちょうどよく、かなり楽しめた。
夫と子どもは、最後のところでこの事件が実際に起こったものと気づいて衝撃を受けていた。
晩御飯を食べたら急に片付けスイッチがオンになり、まずはリビングを片付けつつ、服を整理する。まだ途中。明日も続きをやりたい。